part.3からの続き。
【第3試合】
金成 知佐子(かなり ちさこ) vs ダイナマイト関西
第3試合に登場した金成知佐子選手は、第1試合に出場した、金成幸子選手のお姉さんです。
男子では、ザ・ファンクスのドリーとテリー、ミル・マスカラス&ドスカラスの飛行兄弟、新日本の高野兄弟などいろいろおりますが、日本では珍しい、姉妹の女子レスラーです。
だからと言って、パンフレットの金成姉妹の選手紹介コメントが、
なのは、あんまりだと思います。
狙いのような気もしますが。
さて、姉知佐子の相手は、ダイナマイト関西選手。
打撃、特に蹴り技に定評のある選手ですが、関西選手の代名詞と言えば、格闘ゲームファンに知らないものはいないと思われる、
必殺技「スプラッシュマウンテン」です。33P+Gです。関西選手が元祖です。
数々の大物女子レスラーを倒してきたこの技ですが、デビューしたての若手に受けきれる技ではありません。
命が危険です。
とは言え、知佐子が関西にこの技を出させるようなことがあれば、新人の域を飛び出していることの証明となります。
「そこまで関西が押されることはないだろう」
と思いつつ、
「でも、スプラッシュの体勢に入ってかわす、くらいならどうだろう?」
と考える、悪いプロレスファン心もあります。
ところで。
この日の旗揚げ戦は、仙台のローカル有名人が各試合のリングアナをやっていたのですが、この第3試合のリングアナウンサーは、TBCの天気予報でおなじみ、気象予報士の斉藤さんでした。
プロレス観戦歴33年、ラジオの天気予報のCMでは、BGMに長州力さんの「パワーホール」を流してしまうような、生粋のプロレスファンです。
5月の「ハッスル17仙台大会」前のPRで、小川選手と一緒に朝っぱらからハッスルポーズをしていた、素晴らしい人です。
宮城県内においては、みのもんたさん級に主婦層に影響力があるのではないか?
そう思えるほどの人がプロレスファンなのは、今後「仙女」が普及するに当たって、強力な援軍です。
斉藤さんが関西選手に襲われるアクシデントも無く、普通に試合開始。
知佐子は妹の幸子同様、エルボーを関西に打ち込みますが、全く効いている様子がありません。
技を喰らっているはずの関西が前に歩を進め、知佐子にプレッシャーをかけていきます。
それでも知佐子は、勇猛果敢に攻め込みます。
エルボーが効かないと見るや、ドロップキックの連発。ランニングのエルボー。出し惜しみすることなく、自分の教わった技を関西にぶつけていきます。
しかし、倒れない関西。
恐ろしいことに、ダウンどころか、片ヒザを付くことも無く、知佐子の攻撃を受けきります。
ここで知佐子はロープに走り、全体重をかけてのフライングボディアタック! しかし、がっちりと受け止められます。
すべての攻撃が効かない知佐子。関西はバリヤーでも張っているのか?
まるで、「ウルトラマンvsゼットン」です。
動揺する知佐子を、関西はブレーンバスター…の体勢から、ボディスラムでマットに叩きつけます。
関西の攻撃は休むことなく続きます。
ボディスラムに続いて、とうとう出してきたローキック。知佐子はノーガードのまま吹き飛ばされます。それでも両こぶしを握り締め、必死に立ち上がる知佐子。蹴り飛ばす関西。
その攻防に場内もヒートアップ。
しかし、関西がトドメとばかりに、再度ブレーンバスターの体勢へ。
これを堪えた知佐子、なんと関西をボディスラムで投げ返すことに成功します。場内、悲鳴のような大歓声。
カバーに入る。
「ワン! ツー!」
しかしあっさりと返されます。
ここを勝機と見たか知佐子、体勢の整わない関西にドロップキックの連発。片ヒザを付いた関西の顔面にも、ドロップキックを放っていきます。
追い討ちをかける知佐子。
しかし、このとき僕らは気づいてしまいました。
顔面にドロップキックを喰らったはずの関西の首から上は、全く揺れていないことを。
そして、関西の目つきが変わったのを。
明らかにランクの上がったキックで、知佐子を吹き飛ばす関西。
知佐子も負けじと立ち上がります。
しかし、関西の猛攻は凄かった。
胸元へのすさまじいキック。
これは何とか知佐子がカウント2で肩を上げますが、最後に放った回し蹴りは、知佐子のアゴを的確に打ち抜きました。
戦慄の一撃。
知佐子は糸の切れた人形のように、
まるでスローモーションのように、
マットに崩れ落ちていきました。
直後にレフェリーが試合を止めて、4分49秒TKO負けを喫しました。
試合後は、ドクターが瞳孔をチェックするなど、ちょっと騒然とした場内。
「痙攣してるよ」
と隣席のヲズマさんが、心配そうにつぶやいています。
しかし、どうやら大丈夫な様子。
関西は知佐子を起き上がらせようとしましたが、まだ意識が飛んでいる状態。
ならばと関西は知佐子を肩に担ぎ上げ、花道をつれて帰って行きました。
なんとも漢気(女気?)あふれる関西選手の姿に、場内から暖かい拍手が送られました。
part.5へ続く。
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