ラノベ/MHP3rd/新Ki-Men的狩猟生活 第2-2話 あったか新鮮!猪鍋と出汁用大猪の牙260z
前回 2-1話
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「なんだかなぁ」
自分に付けられた2つ名の意味を知り、なんとも釈然としない気持ちのまま、ヲズマスは渓流を散策していた。
ハンターとして認められたのは嬉しいが、別に調合が得意なわけではないのに、なんでそんな風に呼ばれなければならないのか?
そんなことを考えつつも、アオキノコと薬草を摘んでは調合し摘んでは調合し、気がつけば調合した回復薬10個にアオキノコと薬草が10個ずつと、すでに持ち物はいっぱいになっていた。
まだ”調合書(1)入門編”すら持っていないヲズマスの回復薬調合成功率は95%なのだが、ここまで調合はノーミス。
はたして運がいいのか、天性の薬剤師の才能があるのか。それはヲズマス本人にも分かってはいなかった。
ふと気づけば、目の前に蜂の巣が見えた。
回復薬と蜂蜜も調合できるのか? それを調合するとどうなるのか?
そんな興味を持ちつつ蜂の巣に近づく。するとそこは蜂の巣だけではなく、ユクモの木やキノコ、薬草も豊富な場所だった。
「今日は狩猟じゃなくて、採取だけでいいか」
なんとなくヲズマスは1人つぶやいた。
しかし採取を始めようとしたとき、その言葉に反応する人物がいた。
「いいのか?」
「え?」
ヲズマスは驚きを隠せなかった。
先ほどまで自分の周りには人どころかモンスター1匹、いや、ブナハブラの気配すら感じなかったというのに。
「えっと…どういうことでしょう?」
恐る恐るその謎の人物に話しかける。
「狼になりたいんじゃないのか?」
「狼…。」
ヲズマスは、出発前にライトボーガン使いから言われていた言葉を思い出した。
「一度狩りの味を覚えたハンターは、二度と犬に戻ることは出来ない。そして”モス”の屈辱にも耐えられなくなる」
モスとはアオキノコが大好きな、豚によく似た草食動物である。
その言葉は、楽な道に逃げれば二度と誇りを取り戻せないことを告げていた。
「礼儀を持ちて誇りをかけよ…ですね」
ヲズマスは軽い笑みを浮かべ、片手剣を構えた。
2人が会話をしている間に、ドスドスと地響きを立てて近づいてきたモンスター。
”大猪”とも呼ばれる巨大な猪、”ドスファンゴ”が間近に迫っていた。
採取だけでは終わらせない。狩猟してこそのハンター。
突進してくるドスファンゴに、ヲズマスは片手剣で斬りかかる。
しかしパワーの差は歴然。ドスファンゴの突進は、ヲズマスの身体を軽々と空中へ弾き飛ばした。
「ぐはっ!」
何とか着地するヲズマス。ドスファンゴは次の狙いを、先ほどまで会話していた謎の人物に向けた。
地面を数回掻き、ものすごい勢いで突進するドスファンゴ。
「危ない、キミッ!」
ヲズマスが叫ぶ。だがその”彼女”は、
「猪突猛進…。」
つぶやくと、その突進を直前でスルリと避ける。
巨大な切り株に正面から激突するドスファンゴ。
「やったか?」
「いや…ヤツはこの程度ではくたばらない」
”彼女”の言葉どおり、ドスファンゴはピンピンしている。いやそれどころか、激突した切り株が音を立てて崩れ去っていく。
「あの巨大な切り株を? なんて固い頭だ!」
「いや違う。硬いのは牙。そしてその牙は弱い頭をガードするためのカモフラージュ」
「なんですって?」
「左右から挟み撃ちだ。出来るな?」
「はい!」
”彼女”の言葉にうなずき、横に並びドスファンゴを待ち構えるヲズマス。
今の彼は知る由もないが、隣にいる”彼女”こそ、村でも数少ないハンマー使いにして、伝説のポッケ村クエスト”モンスターハンター”をハンマーで超えた経験もある、一流ハンター・カイケイ。
魔法のようにハンマーを振るい、難クエストをこなしていくその姿から、
「会心の女魔導師(ストライク・ウィッチ)」
の2つ名で呼ばれるハンターであった。(通称ウィッチ)
再び猛突進で一直線に突っ込んでくるドスファンゴ。
しかしそれを、左右同時に回避するヲズマスとウィッチ。
そして右からはハンマー、左からはシールドで弱い頭部に激しく打撃が加えられる。
気絶して横倒しになるドスファンゴ。
この機を逃すハンターではない。そしてその周囲には、ドスファンゴの素材を奪おうと近づく”犬”たちの姿もあった。
「あいつらがドスファンゴを倒したあとがチャンスだぞ。それまでは見守ってるんだ」
犬たちが素材を奪う算段をしている。しかし、それを許すウィッチではない。
「ふふ、来い犬ども。今宵、貴様らにやる素材はない」
「ま、まさかあいつは、ウィッチ!?」
「あいつにかかったら、ドスファンゴが消えるまで俺たちは素材を剥ぎ取れない」
「くそっ、かかれーっ!」
犬たちが一斉にウィッチに襲い掛かる。
彼らは知っている。たとえウィッチが狩りを成功させても、その後狩猟したモンスターの前に立ちはだかり、狩猟に参加しないハンターに絶対に剥ぎ取りを行わせないことを。
そのためには、ここでウィッチを倒さねば大猪の素材は手に入らない。
一斉にウィッチに襲い掛かる犬たち。
しかし。
「ハンマーストライク!」
魔法のハンマーを振るうと、面白いように犬たちは宙を舞う。
そして、
「鉄山靠!」
反対ではヲズマスがシールド攻撃で犬たちを吹き飛ばしていた。
その背中にウィッチが語りかける。
「どうだ?」
「楽しいです」
「そうか。ならば、狼の矜持を忘れるな。行け!」
「狼の…矜持…。はい!」
ウィッチの言葉を受けて、ヲズマスはドスファンゴに飛びかかる。
気絶から回復したドスファンゴは猛り狂っているが、その突進をかわしてヲズマスが大猪を切り裂く。
勝負は決した。
「なるほど、それで今夜は猪鍋か」
「はい。鍋とか食べたいと言っていたので」
狩猟を成功したヲズマスは、ライトボーガン使いと双剣使いと鍋を囲んでいた。
「やはり寒い日は鍋ですね」
「あぁ、いい夕餉だ。早速いただこう」
「いただきます」
ライトボーガン使いと双剣使いが鍋をつつく間、ヲズマスは灰汁を取り、火加減の調整をしていた。
「そんなことをしていないで一緒に食べたらどうだ? お前が狩った大猪だろう」
「そうですね。けど、せっかくだから美味しくいただきたいですし」
「あまりお料理に夢中になると、新しい2つ名がついちゃうかもしれませんよ?」
「そうだな。おそらく明日からの2つ名は”鍋奉行”だな」
「それは勘弁してくださいよぉ」
3人の笑い声が、厳冬のユクモ村の夜に響き渡った。
ED ♪笑顔の法則
http://video.mixi.jp/view_video.pl?owner_id=132013&video_id=11389726
~次回予告~
凍土に現れたモンスター・ウルクスス。
新たなフィールドでヲズマスは如何に戦うのか?
3-1話
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