前回 3-2話
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そして明くる日も、そのまた明くる日も、ヲズマスは猟犬部隊とともに狩りに出かけた。
ある日は水没林、ある日は火山と、場所を変えて狩りに挑み、そのすべてに勝利を収めた。
しかも、あっさりと。
いや、勝利を収めたとは言っても、その狩りは砂原で行われたときと同じく、他のハンターがモンスターを弱めるところを遠くから眺め、弱ったモンスターを最後に仕留めて素材を剥ぎ取るという、猟犬部隊と最初に同行した狩りと変わらないものではあったが。
ヲズマスは、持ち帰った素材を眺めつつ、釈然としないモヤモヤとした感情に襲われていた。
「キメハラと猟犬部隊? なんでそんな連中と」
「はぁ。猟犬部隊に入らないかと誘われまして…」
狩りの後、無限の毒と夕食を食べながら、ヲズマスは話を続けた。
「一緒に狩りに行って、すんなりと素材は持ち帰れたのですが。なんていうか、期待していたほど素材入手の喜びが無くて」
「なにを手に入れたんだ?」
「ギギネブラの不気味な皮やおそろしいクチ、ベリオロスの琥珀色の牙や、爆鎚竜の骨髄などですが…」
「ほう。下位のクエストではかなり貴重な素材だぞ。喜びが無いわけないだろう?」
「ただ何というか…、違和感が…」
「違和感?」
ヲズマスは、それまでの狩りとは違う、すんなりと素材を手に入れられることに違和感を感じていた。
これまでにハントした、大型モンスターのアオアシラやドスファンゴ。恐らく、強さではそれらのモンスターを遥かに上回る相手から素材を奪っているというのに感じる違和感。
それが何からくるものか、ヲズマスは分からないでいた。
「ふっ、そうか…」
「なんです?」
無限の毒はそれには答えず、残ったスープに口をつけていた。
「もったいぶらないで教えてくださいよ」
「そうだな。かつての偉大なハンターが残した言葉にこんなものがある」
「残した言葉?」
「狩りは成功も失敗もその途中経過も含めて、全てがそろって”最高の狩り”と成りえるのだと」
「全てがそろう?」
「この言葉の意味が分かれば、おのずと答えは出るはずだ」
翌日、ヲズマスは猟犬部隊からの連絡を受け”凍土”にいた。
”ウルクスス”と呼ばれる巨大なウサギ型モンスターに代表されるように、寒さに耐性のある、表皮の分厚いモンスターが支配する極寒の地である。
人の介入を拒むこの土地に、猟犬部隊とともにヲズマスは足を踏み入れていた。
「そろそろ返事を聞かせてもらえるんだろうね」
猟犬部隊のリーダー、キメハラはヲズマスに問いかけた。
「えぇ、今日の狩りで答えを出しますよ」
「いい返事を期待しているよ」
その日の狩りも、これまでと同様だった。
ターゲットのドスバギィは、狡猾な動きと睡眠弾を吐き出す厄介な竜であったが、ハンターたちは連携の取れた攻撃と罠で、ドスバギィを追い詰めていた。
そして、ヲズマスとキメハラ率いる猟犬部隊は、いつものようにそれを眺めているだけだった。
しばらく後、ドスバギィはハンターの攻撃に耐えかね、ヨロヨロと逃亡を始めた。
捕獲のチャンス、いや、討伐のチャンスだ。
「よし、いくよ」
キメハラの号令にあわせて、ドスバギィの潜む氷の洞窟へと移動する。
ヲズマスと猟犬部隊が到着したときには、ドスバギィはすでに夢の中だった。
「下がっているんだ」
キメハラは、それがさも当然であるように猟犬部隊たちを射程範囲から遠ざけ、ドスバギィに向けて竜撃砲を放った。
絶命するドスバギィ。ハント完了である。
「さ、素材を持ち帰ろうか」
キメハラはそういいながら猟犬部隊とともに倒れたドスバギィに近づく。しかし、ヲズマスはその様子を真剣なまなざしで見つめたまま、動かなかった。
不思議に思ったキメハラが声をかける。
「どうしたんだい、剥ぎ取らないのか?」
その言葉に反応し、ようやくヲズマスが動く。そしてキメハラのそばで口を開いた。
「これが僕の答えです」
言うが早いか、ヲズマスは懐から小さなタルを取り出した。それを剥ぎ取りをしている猟犬部隊の足元に置いていく。
数秒後、剥ぎ取りをしていた猟犬部隊は、爆発音とともに吹き飛ばされていた。
小タル爆弾。
火薬草と小タルを調合することで作成可能な小型の爆弾。威力はさほどではないが、高性能な時限式で、人1人を容易に吹き飛ばす程度の破壊力はある。
猟犬部隊は剥ぎ取りをおこなえないまま、火だるまとなり吹き飛ばされた。
「な、なんのつもりだ、ヲズマス!」
キメハラがヲズマスに問いかける。
「これが俺の答えです。つまらないんですよ、こんなの」
「なに?」
「素材は自分自身でモンスターを倒してこそ、得られたときの喜びは大きい。たとえ狩りに失敗し、回復薬や罠が無駄になっても、モンスターと戦う過程にこそ意味がある。素材だって、すんなり手に入っても面白くないんですよ」
「このっ!」
「知ってますか、キメハラさん。苦労して貴重な素材を手に入れたときって、めちゃくちゃ嬉しいってことを」
「生意気を!」
キメハラがガンランスの砲撃をヲズマスに見舞う。
しかしヲズマスは、間一髪それを交わす。
「俺たちは猟犬部隊(ガンドッグ)だ。軍隊として行動すれば、弱者とて強くなり、強力なモンスターを倒し、素材を手に入れることができる!」
「どれだけ群れても、犬は犬だ!」
「なんだと?」
「キメハラさん、あなたと会ったときに俺は違和感を感じた。それが何か分かりますか?」
「なに?」
「装備ですよ。確かに高級な防具だ。希少価値も高い。でもね、キズひとつついてない防具なんて店で飾られてるのと同じだ。意味がないんですよ」
「生意気を!」
倒れたドスバギィを前に、2人のハンターが交差する。
お互いの主義主張を訴えんために。
「キメハラさん、犬も団体で行動すれば強くなれるって言いましたよね」
「ああ。それがどうした」
「だったら、背中に気をつけたほうがいいですよ」
「なに?」
キメハラが後ろを振り向くと、視界に入ったのは倒れたドスバギィが1体。
しかしその脇に、もう1体ドスバギィの姿があった。しかも、1体目に倒したものよりも遥かに大型のドスバギィが。
「バカな、2匹目だと!?」
「素材に気をとられて、ギルドの依頼をよく見てなかったんですね。今回の狩猟は、ドスバギィ2頭の討伐依頼ですよ」
ドスバギィはキメハラの頭から睡眠弾を吐きかける。
直後、強烈な睡魔に襲われるキメハラ。
「こ、このままでは…」
眠りに誘われるキメハラをドスバギィの強烈な体当たりが襲う。ガンランスとは言え、今のキメハラにこの攻撃をかわす術はなかった。
ガキィッ!
その間に入り込むヲズマス。装備していた盾が2人の身を守った。即座に片手剣の切っ先でキメハラに活を入れ、正気を取り戻させる。
「どうやら揃ったみたいだ」
ヲズマスの言葉にキメハラが洞窟の入り口に目をやると、先ほどまでもう1体のドスバギィを追い詰めていたハンターたちが、ようやく追いついたところだった。
「少しは手伝ってくださいね、キメハラさん」
その後、ドスバギィが集結したハンターたちに、逃走する間もなく狩られるまで、そんなに時間はかからなかった。
「狩りにはリスクが付き物だ。だからこそ、得られたときの喜びは大きい」
「そうですね。今回、猟犬部隊と行動して、つくづく分かりました」
ヲズマスは、凍土名物のお土産「ウルクススまんじゅう」を食べながら、無限の毒、紅ノ牙と話していた。
「それで、あいつらと行動したときの素材はどうした。売ったのか?」
「いやまあ、せっかく手に入れたものなので、それはそれとして持ってますけど…」
「素材は大事ですからねぇ」
「ただですね、素材がちょこっと足りないので、今度、お2人に手伝っていただけないかなぁと」
「断る」
「断ります」
2人は言い終わるが早いか断った。
「猟犬部隊にそれだけの啖呵を切ったんだ。もう1人で大丈夫だろう」
「がんばってくださいね。応援してます」
「ですよねー」
あんまり偉そうなことは言わないでおこうと、心に誓うヲズマスであった。
エンディング
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~次回~
農場でバーベキュー。
第4話
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