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2013年5月10日 (金)

ラノベ/MHP3rd/新Ki-Men的狩猟生活 第5-1話 それは昔、子供の頃に近所の空き地で遊んだフワフワモコモコした綿毛の感覚。布団に入れれば軽くて暖か柔らか。雷狼竜の帯電毛490z

前回 4話
http://kmnparty.way-nifty.com/manga/2013/02/mhp3rdki-men448.html

ユクモ村南区。
この地区はユクモ村の中でも最も山深く、隣接する村との境界でもある「中山峠」は、その標高の高さと道中の険しさが有名であった。そのため、村にたどり着く前の宿や売店が発達し、ユクモ村の中でも重要な中継地点であった。

人里離れた山奥と言うことで、周辺に出現するモンスターも相応な強さではあったが、そのレベルにあわせるように、峠に集まるハンターも屈強な者たちが集っていた。村人たちの間でも、
 「ハンター最強は南区」
と噂されるほどであった。

その南区のハンターたち、いや、”最強説”すら流れていた2つ名持ちの”狼”たちが次々に倒されると言う事件は、人々に不安を与えるには十分すぎる意味合いを持っていた。

そしてその情報は、ヲズマスたちが拠点とする”ユクモ村北区”まで届いていた。

OP
http://video.mixi.jp/view_video.pl?owner_id=132013&video_id=11363267

 「南区の狼たちが全滅!?」

集会所のロビーで無限の毒の話を聞いたヲズマスは、驚きを隠せなかった。

 「そうだ。一部では最強とも言われていた南区の狼たちが、何者かに相次いで倒されたそうだ」
 「南区…」
 「お前もユクモ村に来るときに中山峠は通ったんじゃないか? あそこには一番大きな峠の茶屋もあるしな」
 「いえ、そうではなくて…」
 「なんだ?」
 「ユクモ村って”区割り”だったんですか?」
 「なんだ今更? そうだぞ、知らなかったのか?」
 「そりゃ、知らないですよ。村ですもん、ここ。区ごとに分かれてるなんて、普通思いませんよ」
 「ユクモ村は広いからな。村長1人では手が回らないので区毎に分けているのだそうだ」
 「そうなんですか。そういえば、自分ちの住所も知りませんでしたよ」

今更ながらにヲズマスは、自分がこの村に配属されてから、転居届けも出していないことを思い出した。
どうりで最近、誰からも便りが届かないはずだ。

 「ユクモ村は、東西南北と中央区、あと白石区とそこから分区した厚別区の7つの区に分かれている。今度クエストに行くときに、受付で住所の詳細を確認してみるといい。ちなみにここは北区だからな」
 「あ…はい、わかりました」

なんで村のくせにそんなに区が多いのか気になったが、ヲズマスは話を本題に戻した。

 「ところで、その狼たちが全滅と言うのは」
 「あぁ。南区の2つ名持ちの狼たちが、ある日を境に次々と襲われ、全員倒されたそうだ」
 「やられた相手は? どんなモンスターかはわかっているんですか?」
 「そこなんだがな。襲われた狼たちに話を聞いてみると、どうもおかしいんだ」
 「おかしい?」

無限の毒は、ヲズマスの問いに少し間を空けてから口を開いた。

 「いまだに意識を失っている狼や、恐慌状態の狼もいるらしく、話を聞けたのは一部の狼だけらしいのだが」
 「はい」
 「そいつらが言うには『狼にやられた』と。みんな口を揃えて言っているらしい」
 「狼にやられた? まさかハンターによる同業者の襲撃と言うことですか?」
 「それはわからない。だが最初に言ったように、南区の狼たちは強い。そいつらを襲うにしても、1人や2人ならともかく、常駐のハンターを全滅させることは不可能に等しい」
 「そう思います。仮にハンターが集団で狼1人を襲うにしても効率が悪いし、そもそも襲う理由がわかりません」

そんな2人の会話に、紅ノ牙が割って入った。

 「もしかすると、その理由を悠長に考えている暇はないかもしれませんよ」
 「どういうことだ、紅の?」

険しい表情で、無限の毒が紅ノ牙に問いかける。

 「この数日の間に南区以外にも西区、中央区、東区の狼たちもやられました」
 「なんだって?」
 「それは本当ですか?」
 「はい。そして白石区と厚別区には、2つ名持ちの狼は多くありません」
 「つまり、次のターゲットはこの北区だと」
 「恐らくは…」

会話を終えた3人の間には、これまでにない不安に駆られた空気が漂っていた。

集会所での情報交換を終えたヲズマスは、1人孤島にいた。
すでに日は落ち、空に浮かぶ満月が海面に映りこみ、美しい風景をかもし出していた。

Mhp3map_kotou_2

 「狼にやられた、ねぇ…」

無限の毒と紅ノ牙との話を終えた後、少し頭を冷やすため、海沿いに来たヲズマスは1人考えていた。
狼が狼を襲う。
その理由はいくら考えてもわからなかった。恨みや妬みだとしても、あまりにも倒された人数が多い上に、共通する動機も不明。しかも移動範囲が広大だ。無限の毒が言っていたように、ユクモ村はその広さゆえに7つの区に区分されている。それを一流のハンターを倒しながら数日で移動する。
どう考えても、不可能であった。

気づけばヲズマスは海沿いから森の中に来ていた。
夜風は冷たすぎると、無意識のうちに内陸に歩いてきてしまったのだろうか。
ふとヲズマスは、周辺が妙に明るく照らされていることに気づいた。月明かりではない。確かに柔らかな光ではあるが、それよりももっと近く、もっと小さな光。

 「雷光虫? それにしてもこんなに多く…」

雷光虫は、素材としてトラップツールと組み合わせれば、シビレ罠にもなる虫の一種だ。その雷光虫が100、200、いや、とても数え切れないほど宙を舞っている。そしてその雷光虫の集団は、ただ飛んでいるわけではなかった。どこか、小高い丘のようなところに向かい、一直線に集まっているように見えた。

 「なんだ?」

ヲズマスが目を細めると、その雷光虫の集まる丘が動くのが見えた。
2本の角がある。強靭な爪がある。巨大な牙がある。
それは決して丘などではなかった。ヲズマスは遅まきながらその雷光虫が集まるのが、モンスターの背中であることに気づいた。
周辺を飛んでいた雷光虫が集まり終えると、そのモンスターは立ち上がり、夜空に浮かぶ月に向かって高く咆哮した。

Mhp3rdjinouga

Mhp3rdjinouga2

ジンオウガ。

”雷狼竜”とも呼ばれる猛きモンスターが、各地の狼たちを殲滅した巨大な狼が、その姿を現した瞬間であった。

 「お、狼にやられたって…本物の狼じゃないかあ!!」

ジンオウガに負けないほどのヲズマスの叫び声が、夜の孤島に響いた。

~続く~

5-2話
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