「サーヴァントと言うシステムを知っているか?」
「ふぁんきーサーバント?」
「そんな竹書房の4コマ漫画の話はしていない」
よく分からないままに怒られた。
目の前に突如現れた、戦士だかなんだか分からない人に。
その人は自らを「ハンター」と呼んだ。
「かつてモンハンがPSPでブームとなった頃、基本的にマルチプレイは友達と集まって遊ぶものだった」
なんか遠い目をして語り始めたので、とりあえず黙って聞いてみる。
「友人とPSPを突き合わせて一緒に狩りに行き、『回復頼む』とか『罠おきます』とかな。やられても『ドンマイ』とか優しさがあった。だが、技術の進化はそのハートフルなやり取りも無くしてしまった」
戦士の鬼人ゲージが上昇していくのを感じる。
「いつからか、チートのアイルーネコが流行りだしてな。大剣の攻撃力が1,500くらいなのに、攻撃力15,000もあるネコがお供なんだ。ミラボレアスもびっくりだよ」
「はあ」
「だから、当時の子供ハンターはいつまで経ってもうまくならない。そりゃそうさ。逃げ回ってれば勝手にネコがモンスターを狩るんだからな。それでは、薄皮を重ねるように巧くなるというゲームのだいご味が失われてしまう。わかるか?」
「まあ・・・そうですね」
「『アカムなんて雑魚だよ』とか言っておきながら、ネコを連れていけない老山龍や仙高人には挑まない。自分の力では勝てないからだ。そんなことをしていてゲームの何が楽しいと言うんだ」
「すいません、それとサーヴァントと一体どういう関係が」
恐る恐る聞いてみた。
「あぁ、すまない。ご存じのとおりサーヴァントとは7つのクラスに割り当てられる」
「いえ、初耳なんですが・・・」
「代表的なクラスは、
『セイバー』
『ランサー』
『アーチャー』
『ライダー』
『バーサーカー』
『キャスター』
『アサシン』
の7種類だ。まれに例外もあるが、ほとんどの場合はこのスキルに該当する」
「はぁ」
「使役されたサーヴァントは、日時に関係なく呼び出される。メール、電話、最近だとLINEなんかも使って執拗に連絡してくる場合もある」
目の前の人が何を言ってるのか、いまいちよく分からない。
「基本的なことを聞いていいですか?」
「なんだ?」
「そもそもサーヴァントってなんですか?」
「む、知らんのか。まあいい。簡単に言うとサーヴァントとは、かつてのハンターの英霊だ」
「ハンターの・・・英霊?」
だんだん話が難しくなってきた。
「かつて私たちは「ハンター」と呼ばれ、村の近隣や、時には遠い街や城塞などに出現するモンスターを狩ることを生業にしていた」
「はあ」
「だが時は流れ、私たちもハンター業を引退、隠居生活を送っていたのだが、次世代の子らがな」
「先ほどの、猫を連れてたと言う」
「そうだ。子供の頃に猫を使って、楽に狩りをしていた連中がな。やってくるのだよ、ネット通信に。大量に、大量に。そしてあろうことかそいつらは」
「そいつらは?」
「狩りをしないのだよ!」
「狩りを…しない!?」
その人は目を見開いて、自分にそう言った。
まるで、上司を愚痴るサラリーマンのように。
「ネット通信で4人プレイをするだろう。子供は挨拶もなく行きたいクエストをただ貼るだけ。こちらがそのクエストに参加すると、貼った本人はスタート地点から動かずこう言うんだ。『お前ら狩ってこい』とな」
「それは・・・」
「ひどい話だろう。こちらは見知らぬ子供のために腕を磨いたわけではない。だがな、そういう輩がとにかく世に蔓延してしまったのだ。由々しき事態だよ」
「なるほど」
「だが、メーカーもバカではない。そういう輩を排除する機能を実装してくれたのだ。当たり前だ。そうでなければこちらの精神がすり減ってしまって持たない」
ここに至り、ようやく話が見えてきた。
「そして、ようやく我々にも穏やかな狩りの時間がきたと思ったのもつかの間、先ほどの次世代の子らがな。来るんだよ。親と一緒に!」
「!?」
そこからの戦士の話を簡潔にまとめると、こういうことのようだ。
親と一緒に狩りに行く → そこそこの武具が作れる → クラスの友達は稀少素材で高級武具をすでに作っている → 悔しい → 親と一緒に狩りに行く → 親子の腕では倒せない敵が出てくる → 高級武具が作れない → 親の非難をはじめる → 親は友人に凄腕のハンターがいたことを思い出す → 一緒に狩りに行ってほしいと頼まれる → 友人(目の前にいる英雄)が参加して割と簡単にモンスターを倒す → 初回に「逆鱗」とか「天殻」とか出ちゃう → あと○個足りない → マラソンだぁ → 毎日のようにネット通信に召喚される
「理解しました。だからあなたは英雄でありながら、自らをサーヴァントと」
「そうだ。サーヴァントには意思はあるが自由はない。ただ必要な時に召喚され、モンスターを狩るだけだ」
「まさにサーヴァント」
「どんなに仕事で疲れて帰ってきても呼び出され、狩りに失敗すれば年端もいかぬ他人の子供になじられる。徐々にこの身は疲弊し、擦り切れていった。後に残るのは、自分には不要なモンスターの素材の山だけだ」
「あなたの言いたいことは分かりました。ではなぜ、今僕の前に現れたのですか」
根本的なことを問いかけた。
だがそれはどうやら、地雷だったようだ。
「知れたこと。かつての自分を亡き者とし、モンハンなど遊べないようにするためだ!」
言ったが早いか、戦士は双剣で襲い掛かってきた。
「おわっ!」
寸前で回避する。なんだこいつ、危ないやつか。
「先ほどサーヴァントは7つのクラスに分けられると言ったな。その中でも最も多いのはバーサーカーさ」
「狂戦士が最も数が多い? どういうことだ」
「自らの目的が得られない狩りなど意味はない。ほとんどのサーヴァントは精神をすり減らし、大剣なら溜め3を討つだけの、双剣なら乱舞しかしないだけの、ただ目の前のモンスターを早く狩ることに専念する道具に成り下がるのだ。暴走するだけのバーサーカーにな」
戦士の間合いが迫る。
「終わりだ」
戦士の双剣が彼を斬る瞬間、なぜか目の前に巨大なタルが現れた。
「なに、し、しまった、これはっ!」
振り上げた双剣は止まらない。戦士の双剣はタルを斬り払い、そして同時に大爆発を起こした。
すんでのところで緊急回避で跳ぶ戦士。しかし、その爆風は肉体にダメージを与えていた。
「バカな、タル爆弾だと? いつの間にこんなものを。いやそれよりも、なぜ2ndG発売前のヤツがこれを扱える?」
そう叫んだ瞬間、恐ろしいほどの殺気が戦士の周囲に充満しているのを感じる。そして今、この後頭部に突き付けられているのは、おそらく銃口だろう。
「モンスターハンターポータブル2ndG発売前の僕なら倒せると思ったか?」
「なん・・・だと?」
「自分でも忘れているようだな。ブームが始まる前から遊んでいた、2(dos)時代の姿を」
言い終えた直後、彼はトリガーを引く。
戦士は流石に回避したようだったが、爆風の煽りを受けたか、地面にうつぶせに倒れている。
「かつての自分が、今の自分よりも弱いとは限らない。そうだろ」
「くっ」
「ならば抵抗くらいして見せろ。お前、英雄なんだろ?」
「タイガ(大河)つながりか。分かりづらいぞ。ネタの選別を考えろ!」
「メタ禁止!」
彼の放つライトボーガンの速射を戦士が避ける。そしてお互いに、切り札を出す。
「ファイナルベント」
彼は一瞬で大タル爆弾とカクサンデメキンを錬成、大タル爆弾Gを作り出す。
「ファイナルベント」
戦士は鬼人薬を飲み干し、鬼人乱舞を狙う。
互いのエゴとエゴがぶつかり合う。
そんなゲームじゃないといいですね、モンハンは。
てなわけで、そんな様々な人間模様が見えるかもしれない「モンスターハンタークロス」は、11/28狩猟解禁です。
僕は仕事で覚えるのが多い状況なので、まだ悩み中。
http://www.capcom.co.jp/monsterhunter/X/
追伸:
doku師匠、今回は難産でしたよ。
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