ラノベ/がろすぺ!/第1-C話 闘牛士(マタドール)ローレンス・ブラッド
前回 第1-B話
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「うぉー! 何故だ! なぜ負ける!?」
赤キム使いの叫び声が店内に響く。
同時に周囲のギャラリーから失笑にも似た半笑いが起きる。
ギャラリーは知っているのだ。この毒村が扱うローレンスの強さ、いや、厭らしさを。そしてこの赤キムの動きでは決して勝てないことを。
「ふざけんじゃねぇぞ、もう1回だ!」
赤キム使いが50円玉を入れる。
これで3回目の連コインだ。この赤キム使いは、自分が勝つまで連コインを止めることは無い。50円玉が切れたら、コンティニューの10秒以内に両替に行き、すぐに戻ってくる。
マナー違反も甚だしい行為だが、頭に血が上りすぎている赤キム使いが、周囲へのマナーなど気にするわけがない。
ギャラリーも流石に苛立ち、キムの挑発ポーズのように両肘を曲げて手のひらを上にして、
「ふぅ」
とアクションをする者も出てきた。
ここで戦いを見ていたギャラリーの内(なか)の1人が、赤キム使いに注意しようと一歩踏み出すも、その対面にいた人物に気付き、押しとどまった。
そして赤キム使いとローレンス使い・毒村の再度、いや4度目の対戦が始まった。
赤キムが半月斬、飛翔脚でローレンスに攻め込む。
しかしローレンスは巧みにガードし、サーベルの先端を当てていく。当たれば良し、ガードされても先端なら距離が遠ければ、ほぼ反撃を受けない優れ技だ。
毒村は、最初の対決の第1ラウンドで、対戦している赤キムの動きをほぼ把握していた。
半月斬は、遠くからでも距離に関係なく出すので当たりが浅い。
飛翔脚を乱発しすぎる。
要するに、キャラ性能に完全に頼り切った戦い方をしていた。
普通のゲーセンなら、それでもそこそこは勝てるだろう。
しかしここは、日本屈指の格ゲープレイヤーが集う「アリマジロウ」である。こんな凡庸なプレイをするキムなど、毒村は数え切れぬほど倒してきた。
「お前は今までに食べたパンの枚数を覚えているのか」
毒村の心の中のDIO様(第1部)がささやく。
そして数秒後、4回目の対戦も決着がついた。
半月斬にサーベルを当て、飛翔脚をガードしてブラッディスピン、飛翔脚の失敗ジャンプは空中投げで吸い込み、体力差が付けば距離を取ってCボタンで「オーレイ」と挑発。
ギャラリーの誰が見ても、毒村の完勝であった。
台パンし立ち上がる赤キム使い。その顔はさらに紅潮している。
「てめぇ! ざけんじゃねぇぞ、強キャラ使いやがって! ふざけんな!」
赤キム使いがとんでもないことを口走った。
ゲーメストダイヤグラム最強のキャラクターであるキムを使っておきながら、その対戦相手を「強キャラ」呼ばわりである。
その怒りの度合いが伝わってくるが、この手のセリフを吐いた対戦相手が次にとる行動は一つである。
数秒後に確実に来るであろう未来を予見して、ギャラリーたちは失笑を禁じえなかった。
赤キム使いは着席と同時にコインを投入、迷うことなくローレンスを選んだ。
同キャラ対戦。
怒りに打ち震える赤キム使いとは裏腹に、ギャラリーたちの空気が緩んでいくのを感じる。
それは何故か。
簡単なことだ。
ローレンスは、ぶっちゃけ弱いのである。
攻撃力はそこそこ高く、リーチもあるので厳密には弱くはないのかもしれない。
しかし、その動きと技の出の遅さ、長すぎる溜め攻撃、実践導入するにはコマンドが長すぎる超必殺技と、初見で使うにはあまりにも、あまりにもクセが強すぎるのである。
そしてギャラリーほぼ全員が未来視した通り、赤キム使いが選んだローレンスは、ほぼ一方的にやられ、弄られ、ストレート負けを喫した。
赤キム使いの紅潮していた顔が、この1回の対戦中の短時間で青ざめていた。
「こんなキャラでなんで勝てるんだ…」
ギャラリー全員が深く頷いていた。
この店でも、毒村以外にローレンスを使いこなせるものはいない。
似たような動きは真似ればできるのだが、驚異的な先読みと、独特の動きそのものは身に着けることが出来ず、誰もがローレンスから手を引いていた。
赤キム使いは、しばし呆然としていたが、我に返るとポケットから50円玉を取り出し、投入しようとして、ギャラリーの1人に止められた。
「やめとけ。お前じゃ何回やっても、そのローレンスには勝てん」
~続く~
第2-A話
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